ドラマティックでメロディアス。正統派なのにスラッシュメタルの疾走感。 Savage Messiah 3rdアルバム『The Fateful Dark』
イギリスのヘヴィメタルバンド、Savage Messiahの3rdアルバム『The Fateful Dark』を紹介します。2014年リリース。
「スラッシュメタル×正統派メタル×パワーメタル」という音楽性。
彼らのアルバムは映画の予告編だった
今作までの彼らのアルバムは、私にとって映画の予告編のようでした。
映画の予告編はご存知かと思います。テレビCMやYouTubeでも見られます。
あれ、凄く面白そうに作られているんです。
しかし、面白そう!と期待して本編を見に行くと、案外そうでもなかったりする。
「結局予告編が一番面白かった」といった経験はありませんか?
彼らのアルバムもそれに似ていました。
とにかく1曲目が素晴らしい。これはいいアルバムかもしれない!と期待が膨らむわけです。
しかし、残念ながら最後までその期待を超えることはありません。
「結局1曲目が一番良かった」という感じです。
今作でそれを打破出来るかどうかが、私にとっての注目点でした。
前作までを踏襲。そして改善
前作までは、1曲目が疾走、次いで2曲目が盛り上がらないミドルテンポの楽曲ということで、勢いを殺していました。
1曲目が抜きん出ているだけに、物凄く勿体無かった。
ここにきてようやく気が付いたのか、今作は頭から三曲連続で疾走曲です。
楽曲拙稿
印象に残った曲を、走り書きの駄文と共に紹介します。
#1 Iconocaust
もはやSavage Messiahとしては定番のパターン。スラッシュメタル直系の1曲目。
壮大なイントロを挟んで疾走に転ずるという流れは、メタルのツボをよく押さえています。
余計な言葉はいらず、ただただ「格好いい!」の一言です。
サビメロは従来の楽曲と比べても印象的で、「アーイカーナコーースト!」のコーラスはライブでも盛り上がるのではないかと思います。
#3 Cross of Babylon
中盤のIron Maiden直系のソロ部分にメタルの血が躍ります。
ギターソロ後の「Croooooss o' Babylon」と繰り返すメロディは、まさに "Hallowed Be Thy Name"。
これはもう、完全に分かってやっているのでしょう。
#5 Live As One Already Dead
バラードナンバー。
声を聴くだけでイケメンだろうと分かるボーカルが冴えます。
憂いのあるメロディ面と、中盤に少しだけ登場する、希望を思わせるアップテンポ部分との対比が良い。
泣きのギターソロも決まっています。
#9 Scavengers of Mercy
リズミカルなリフで疾走する9曲目。
サビよりもBメロが耳に残ります。
中間部では、テンポダウンからのドラマティックな展開を見せてくれます。
ここが非常に格好いい。ツインギターのリフが熱い。近年のMachine Headのようです。
ギターソロもよく調和しています。
アルバムとして完成した
アルバム全体として、全体のバランスが取れてきました。
後半になってもダレることなく、一つのアルバムとして完成した感があります。
彼らのアルバムの中ではNo.1です。
リフは所々弱いかな、もう少しフックが欲しいかな、と思うのが正直な所ですが、楽曲としての完成度は本当に高くなりました。
もはやスラッシュメタルではなくなった
彼らは、デビューこそスラッシュメタルバンドとして扱われていました。
しかし、もはや初期のようなスラッシュ路線は控えめになり、正統派メタルやパワーメタルの要素が前面に出てきました。
元々こういう音がやりたかったのだと思います。
そして前二作は、それを具現化するためには実力不足でした。
今作ではようやく、実力と構想が噛みあった気がします。
個人的には初期の荒々しさも好きだったので残念に思う一方、メロディ面の向上には素直に良いと言えます。
もはや彼らはスラッシュメタルという枠ではなく、一つのヘヴィメタルバンドとして扱われるべきでしょう。
まとめ
総合的に見て、とてもレベルの高いバンドになりました。
あとはキラーチューン、キラーリフ、会場の観客が熱唱するようなメロディ。そういったものを発展させていけば、さらなる飛躍が期待できます。
現在までのアルバムは、2~3年間隔でリリースされています。
従来通りのペースであれば、今年か来年には新作を拝見出来るかもしれません。